国民保養温泉地

「国民保養温泉地」をご存知ですか?環境省が指定する、多様な泉質を誇り湯治・温泉療養に適している温泉地のことです。

昭和29年に厚生省(当時)によって、酸ヶ湯温泉(青森県)奥日光湯元温泉(栃木県)四万温泉(群馬県)の3ヵ所が最初に指定されました。
以後年々数が増え、最近指定された温泉地は先月年5月16日付けで、大館ぐるみ温泉郷 (秋田県)梅ヶ島温泉郷 (静岡県)湯郷温泉(岡山県)が追加指定され、現在97カ所になります。国民保養温泉地について詳しくはこちら。

国民保養温泉地とは

国民保養温泉地とは、温泉法(昭和23年法律第125号)に基づき温泉の公共的利用増進のため、温泉利用の効果が十分に期待され、かつ、健全な保養地として活用される温泉地を環境大臣が指定するものです。

余暇を見つけて温泉に行き、日頃の疲れを癒し、家族や友人と団らんすることは、日本人の誰しもが望む楽しみの一つです。旅に出れば、至るところに温泉のあるわが国はまことに恵まれていると言えるでしょう。

わが国の多くの温泉地は古くから湯治場として人々にしまれ、利用されてきました。働く人々が余暇を利用して心身を休め、健康の増進を図り、あるいは疾病を治療するところが温泉地でありました。このような温泉のもつ本来の使命は現在でも変わりないでしょう。

温泉療養は、近代医学からみても、各種の慢性疾患などに優れた効果があることが立証されており、またリハビリテーション施設でも利用されています。

温泉地であれば、いずれも保養地あるいは療養地として利用されてよいのですが、数多くの温泉地のうち、温泉利用の効果が十分期待され、かつ健全な温泉地として優れた条件を備えている地域を、昭和29年から環境省は国民保養温泉地として指定し、平成29年6月現在まで、全国に97ヵ所の国民保養温泉地が指定されています。

国民保養温泉地の条件

  • 利用源泉が療養泉であること
  • 利用する温泉の湧出量が豊富であること
  • 自然環境、まちなみ、歴史、風土、文化等の観点から保養地として適していること
  • 医学的立場から適正な温泉利用や健康管理について指導が可能な医師の配置計画又は同医師との連携のもと入浴方法等の指導ができる人材の配置計画もしくは育成方法等が確立していること
  • 温泉資源の保護、温泉の衛生管理、温泉の公共的利用の増進並びに高齢者及び障害者等への配慮に関する取組を適切に行うこととしていること
  • 災害防止に関する取組が充実していること
 

平成29年指定の温泉地 ピックアップ

今年度指定された「国民保養温泉地」を紹介します。各地で脈々と湧き出る良質のお湯を体験しに行きたいですね。

大館ぐるみ温泉郷(秋田)

おすすめポイント

滝温泉、雪沢温泉、矢立温泉、たしろ温泉、大葛温泉、市街地温泉区域を対象として「大館ぐるみ温泉郷」としている。 古くからの国道や鉄道及び平成10年に開港した大館能代空港や日本海沿岸東北自動車道の延伸など北東北の交通の要所となっている。

梅ヶ島温泉郷(静岡)

おすすめポイント

戦国時代、「信玄公の隠し湯」として合戦で傷ついた侍の療養所の役割を担うなど、古くから湯治場として栄え、第二次世界大戦時には、帝国陸軍病院の分院として接収され、傷病兵の湯治に使われた。

湯郷温泉(岡山)

おすすめポイント

開湯は1200年以上昔、平安時代、延暦寺の慈覚大師円仁法師が、湯郷の地で水浴びをして傷を治す鷺を発見したという逸話から始まる。世界的な知名度を持つ宮本武蔵の生誕地でもある。

「国民保養温泉地」を指定している環境省へ独占インタビュー

今回、「国民保養温泉地」を紹介させていただくにあたり、環境省の楠本さんにインタビューをさせていただきました。海外からの観光客も増え、日本の貴重な観光資源や魅力になっている温泉地の活性化、また、その資源を未来に繋げ守り続けていくことがミッションである「温泉地保護利用推進室」に所属されている楠本さんに「国民保養温泉地」の楽しみ方なども伺いました。
Q.国民保養温泉地について教えてください。

A.国民保養温泉地は、昭和29年(1954)にスタートした制度です。当時より、温泉地のあり方については議論があり、国民の皆さんに休養していただき、また心身のリフレッシュをはかっていただくものとしてスタートしました。その後、数度の温泉ブームや旅行形態の変化もありながら、自然にあふれ、また古くからの歴史を持つ国民保養温泉地が見直されてきていると思います。

日本には約3,000以上の温泉地が存在しますが、国民保養温泉地には97カ所が環境大臣により指定されています。

是非、皆さんに国民保養温泉地に宿泊していただき、そして自然、歴史、食といった地域資源をめぐり、温泉につかっていただければと思います。

Q.おすすめの国民保養温泉地の活用法は?

A.国民保養温泉地は全国で97カ所あり、特徴としては、その多くが国立公園等の自然豊かな場所に存在していることや、情緒あふれる温泉街が残っているところです。一方で、由布院温泉や黒川温泉などのように旧来型の湯治だけでなく、温泉地という地域を楽しめる場所もあります。

温泉に行って、旅館に泊まるだけでなく、雄大な星空を見ていただく、早朝に里山を歩く、伝統的な入浴施設を体験していただくなど、その温泉地ならではの空気を存分に味わっていただき、心と体を解放し、元気になっていただければと思います。

Q.今後の活動について教えてください。

A.国民保養温泉地の指定を受けるには、湯量、泉質、周辺の環境など様々な条件がありますが、温泉自体の素晴らしさに加え、周辺にある自然、歴史、食等をめぐる活動を推進していきたいと考えています。こういった取組が民間事業者、また地域でも発生していますので、環境省としてもサポートしていければと考えています。

環境省 自然環境局 自然環境整備課 温泉地保護利用推進室
楠本 浩史 様

療養泉とは

療養泉とは、温泉のうち、特に治療の目的に供しうるもので、次表の温度又は物質を有するものと定義されています。

療養泉の定義

1. 温度 泉源から採取されたときの温度 25℃以上(摂氏)
2. 物質(以下のうち、いずれか一つ) 含有量(1kg中)
  溶存物質(ガス性のものを除く。) 総量1,000mg以上
  遊離炭酸(CO2 1,000mg以上
  総鉄イオン(Fe2++Fe3+ 20mg以上
  水素イオン(H 1mg以上
  よう化物イオン(I- 10mg以上
  総硫黄(S) 2mg以上
  [HS-+S2O32-+H2Sに対応するもの]  
  ラドン(Rn) 30×10-10
キュリー単位以上
(8.25マッヘ単位以上)
 

(注)キュリー単位:純ラヂウム1gより発生するラドンの最大蓄積量を1キュリーという。1キュリーのラドン実量は約100万分の6g(6.01×10-6g)である。

マッヘ単位: ラドンの電離能力が0.001 静電単位に相当するときのラドンの濃度を1 マッヘという。

※2017年6月現在の情報です。掲載情報は変更される場合があります。