■checkポイント■
≫≫≫ 自家源泉をかけ流し
≫≫≫ つるつる美人の湯
≫≫≫ 石見神楽を定期公演
≫≫≫ 3つの共同湯が点在
オススメしたい方
【女性同士、ご夫婦】
軽快なお囃子に合わせて、きらびやかな衣装に身を包んだ演者が舞い踊り、神話の世界へと誘います。
ここは島根県・有福温泉。
温泉街の中心部にある「湯の町神楽殿」では、島根県西部・石見地方に伝わる郷土の伝統芸能「石見神楽」の定期公演が月に1〜2回(11月のみ毎週土曜)、行われています。
浴衣と下駄で夜神楽に出かける
夜8時30分、「湯の町神楽殿」には4軒の宿から浴衣姿の観光客が三々五々集まってきました。
30人も入ればいっぱいになってしまう狭い会場に、この日は20名ほどの観光客が集まりました。皆、夕食を終えて、浴衣姿での参加です。
第一演目は「塵輪(じんりん)」。金糸、銀糸を施した豪華な衣装は上着だけでも20〜30kgの重さで、金額は200〜300万円もする高価なものだそう。演目によっては400〜500万円といったものもあるそうです。
「石見神楽」最大の見せ場となるのは第三演目の「大蛇(オロチ)」。
日本神話に登場するヤマタノオロチがトグロを巻き、スモークが焚かれ、まるで生きているかのように乱舞する姿は迫力満点です。
有福温泉神楽団は、島根県内に130以上ある社中のうちの一つで、昭和42(1967)年に発足、有福温泉では昭和59(1984)年から定期公演を行っているそうです。
通常ならば秋祭りの前夜祭に夜を明かして行われる石見神楽。
温泉街ならワンコイン(500円)で手軽に見ることができますので、有福温泉に行くならぜひ定期公演日をチェックしてみてください。
狭い路地と石段が独特な趣
かつては「山陰の伊香保温泉」といわれ、芸者衆もいるにぎやかな温泉街だったそうですが、往時の面影は姿を消し、現在は3つの共同浴場と4軒の宿が点在するひなびた温泉場です。
宿は、斜面に張り付いたように建てられているため、大幅な改装工事は難しいのでしょう。
大きな宿はなくて、どこも規模の小さな宿です。
今回宿泊したのは「ありふく よしだや」。
駐車場に車を停めて、石段を登ると、高台によしだやさんが見えてきました。
「チェックインは16時から」というのを知らずに、14時過ぎに行ってしまったので、一旦、荷物を預けて温泉街の散策に出かけました。昼ご飯を食べていなかったので、「落合商店」でそばを食べて、名産の有福飴を買って、時間を潰します。
さて、よしだやで通された客室は、シンプルな和室でした。
トイレは客室内にはなく、共同です。10室のうちトイレ付きは3室。
創業は江戸時代とのことで、ひなびた温泉宿ならではのノスタルジックな気分に浸れます。客室に金庫がなかったのが少し不安でしたが、田舎の温泉ではそんな心配自体が無用なのかもしれません。
美人湯でつるつるお肌に
温泉は、つるつるする感触のアルカリ性単純温泉。いわゆる美人の湯です。
源泉温度は44.8℃。敷地の下から湧き出しているから新鮮そのものです。
この宿の若女将は、2018年4月に島根県警から宿に戻り、若女将として奮闘中。布団敷きや客室の清掃などもこなしているそうです。
料理は、浜田漁港で水揚げされたお刺身がとくに美味しくて印象に残りました。
翌朝は、元湯である「御前湯」に出かけました。
源泉温度47℃のアルカリ性単純温泉は、夏場は浴槽では43℃ほどの熱めの湯。メタケイ酸が68mg/l(リットル)と多く、しっとり、つるつるする極上の肌触りです。
浴槽がかなり深いのが特徴的。
“あごまでどっぷり”派の人はきっと満足できることでしょう。
ありふく よしだや
- 島根県江津市有福温泉町708
- 全10室(トイレ付きは3室)
- 1泊2食12,800円(消費税込・入湯税別)〜
- IN 16時/OUT 10時
写真と文・野添ちかこ(温泉と宿のライター/旅行作家)