■checkポイント■
≫≫≫ コンセプトは「暮らすように泊まる」
≫≫≫ 朝食は簡単な洋食をサービス
≫≫≫ 半露天風呂付き客室あり
≫≫≫ ベッドはシーリー、快眠効果大
オススメしたい方
【湯治客、ご夫婦、家族連れ】
夕食は温泉街で食べたり、自分で調理したり、ご自由にーー。
素泊まり、B&B(ベッド&ブレックファスト)の宿が草津温泉でここ数年、増えています。
2019年8月10日、グランドオープンした「源泉 一乃湯」も素泊まりオンリーの宿。
奈良屋グループ4軒目の宿で、既存の旅館(一田屋旅館)をリニューアルしました。
素泊まりの宿というと、サービスもしつらいも最小限にし、料金を抑えているのが一般的ですが、
こちらは広々としたパブリックスペースを持ち、ラグジュアリーな雰囲気。これまでにないスタイルでしょう。
長期滞在できる設備を備える
コンセプトは「暮らすように泊まる」。
これまで、別荘やリゾートマンションを所有していた人から、「管理が大変だから、手放したい」という声を聞き、「別荘代わりに使ってもらえる素泊まりの宿」を目指して、開業しました。
“恋の病以外、効かないものはない”といわれ、昔も今も湯の効能を求めてやってくる人が多い温泉の実力に加え、周辺に飲食店が多く、夕食を食べる場所には困らない温泉地ならではの新業態です。
ゆったりとしたレイアウトで、44室中10室に半露天風呂を備えています。
館内はカーペットやクッション性のある床材が敷き詰められ、裸足で歩けるのも気持ちいいですね。
ラウンジスペースは4カ所あり、今後はバー営業なども行う予定です。
客室にはミニキッチンや電子レンジが備え付けられているほか、共用スペースにコインランドリーがあるのも、長期滞在や湯治客を意識してのことでしょう。
灯りは間接照明だし、冷蔵庫は周囲のブラウンの木目と同色。インテリアに気を遣い、とても居心地のよい空間です。浴衣とタオルの質の良さも印象に残りました。
一人客用のシングルルーム、メゾネットタイプのファミリールームもあり、用途に応じてさまざまに使い分けることができます。
源泉は2本。浴槽はすべてかけ流し
温泉は、文句なしの名湯をかけ流し。
自家源泉の「新地蔵の湯」と湯畑源泉の2本を所有し、大浴場と貸切風呂では異なる源泉を楽しめます。
貸切風呂に注がれる「新地蔵の湯」は、硫黄分が多く、湯の花が多いのが特徴です。
一方、大浴場の湯畑源泉はしっとりとまろやかな肌触りです。
いずれもpH2前後の酸性泉。水虫や慢性皮膚病、慢性婦人病などに効果が高く、体の“毒出し”をしてくれる温泉。日頃の疲れを取り去って、快眠へと導いてくれます。
男女別の大浴場でのんびりするもよし、貸切風呂に行くもよし、客室の半露天風呂でくつろぐもよし。
草津の温泉というと、高温というイメージがありますが、一乃湯の風呂は高温ではなく、40〜41度程度で入りやすい温度。水で薄めているのかと思ったら、そうではありませんでした。
「こだわったのは温泉の温度。ぬるめの温泉でゆっくり入ってもらおうと、チャレンジしました」と話すのは小林恵生社長。これまでの宿とは違い、ぬるゆでの提供を試みて、湯口の給湯量を絞って、この温度にしているそうです。
大浴場も客室の風呂もぬるめで長く入ることができます。
客室の露天風呂はガラス張りで部屋から見えますが、一緒に行く相手によって、シェードカーテンを下ろすことも可能です。
宿泊した103の客室は、ベッドはシーリーのダブルサイズ(140cm)を2つ並ベています。設計士さんによると、「なるべく、140cmサイズのベッドを入れるようにしました。半数くらいの客室はこの大きさです」とのこと。
体に負担を与えない体圧分散で、寝心地は最高。包み込まれるような感触で、朝までぐっすりと眠れました。さすが、シーリー。羽枕・パイプ枕が2つ用意されているのも快眠効果大でした。
熱い共同湯に入りたい場合は、徒歩1分の場所に「地蔵の湯」があります。
草津温泉では住民が守る共同湯が23カ所ありますが、うち18カ所で観光客を受け入れていて、無料で入ることができます。
温泉地で外食する楽しみ
この日は雨が降っていましたが、湯畑周辺を散策して、今宵の夕食処を選びました。その土地を自分の足で歩き、お店選びをすると、町歩きも一層、楽しくなります。
湯路広場や西の河原通り、細い路地をぐるぐると歩いて、「こうりん坊」という居酒屋を選びました。知りませんでしたが、奈良屋さんの何代か前の料理長が独立された店だと後でわかりました。
おでんや馬肉、ポテトサラダなどどれもおいしい。好きなものを好きなだけ、カジュアルに温泉地を楽しむ。こんな過ごし方もいいものです。
夜20時30分過ぎには食事処から観光客の姿が消え始め、そろそろ宿に引き上げる時間がやってきました。
夜はライトアップされた湯畑を散歩すると、昼間とは違った景観が広がっています。
コンビニでご当地ポテトチップスなどを買い込んで、部屋飲みへと突入ーーと行きたいところでしたが、湯の威力が絶大で、あっという間に夢の中へ。
「1泊2食」の決まりきった滞在を少し崩して、温泉街に繰り出すと、これまでとは違った温泉街の顔が見えてきます。
源泉 一乃湯
- 群馬県吾妻郡草津町135
- 全44室
- スタンダードツイン一人1万450円、露天風呂付きスーペリアツイン一人1万7600円、露天風呂付きスイート一人11万円など(いずれも素泊まり)
- IN 15時/OUT 10時
写真と文・野添ちかこ(温泉と宿のライター/旅行作家)