■checkポイント■
≫≫≫ 源泉は湯量豊富
≫≫≫ 立ち寄り湯もできる
≫≫≫ 加水、加温なしのかけ流し温泉
≫≫≫ 丸尾温泉は今年、開湯200年
オススメしたい方
【夫婦・カップル、友達、おひとりさま】
霧島の温泉は個性派で粒揃い。
ステキな温泉がたくさんあるから、1カ所に留まっていないで、車で湯めぐりに出かけましょう。
炭酸と硫黄のW効果
霧島湯之谷山荘
湯の質と風情を重視したい人は「霧島湯之谷山荘」へ出かけてみましょう。
湯船も床も天井も壁も全て檜。
この湯屋を見ただけでも、ハートが撃ち抜かれてノックアウトされそうになるというのに、お湯がまた最高なのです。
ドバドバと注がれる43度の熱くて白濁した硫黄泉、
32〜33度で炭酸ガスの泡が付着し、硫黄の湯の花が舞っているグレーがかった冷泉(炭酸を含む硫黄泉で、宿の主人は微炭酸泉という言い方をしていた)、
さらに2つの浴槽から湯を引き入れた混合泉(39度のぬる湯)の
3つの湯船に入ることができるんです。風情も湯の質も群を抜いています。手前と奥は深さ100cm、あごまでどっぷりと浸かれる深さで、真ん中は浅め。
大浴場とは別に、貸切風呂もありました。
掲示物には、「湯之谷山荘は昭和15(1940)年開業の湯治場で、5本の源泉井があり、総湧出量は毎分480リットル、pH5.7弱酸性の温泉」と書かれていました(平成21年データでは単純硫黄泉、pH5.3、毎分140リットルの分析表の掲示あり)。
硫化水素ガスを含む硫黄泉は「たん切りの湯」などとも言われ、咳や痰、喘息気味の方など呼吸器全般によいそうです。
宮崎市内から1時間30分かけてやってきた男性は、「ここが一番好きでよく来る」と言っていました。たしかに通いたくなるいい温泉でした。
霧島湯之谷山荘
- 鹿児島県霧島市牧園町高千穂4970
- 全15室
- 1泊2食一人9,870円(消費税込・入湯税別、旅館部はトイレあり、自炊はトイレ共同)〜
- IN 15時/OUT 10時
- 日帰り入浴 可(500円、10〜15時、貸切風呂は12〜15時、別途1000円)
海も林も。自然浴でリラックス
旅行人山荘
絶景が目当てなら、「旅行人山荘」へと出かけましょう。
男女別大浴場の露天風呂「大隅の湯」と「錦江の湯」の2カ所のほか、別料金で4つの貸切露天風呂に入ることができます。
「大隅の湯」と「錦江の湯」は白濁の単純硫黄泉が注がれ、錦江湾や桜島、開聞岳、眼下には国分平野を望む絶景露天風呂です。
かけ流しの温泉に電気風呂
赤松林の中、湯浴みができる「赤松の湯」は貸切風呂の中でも一番人気。
自然の中に自分たちだけ。何ものにも邪魔されない、最高の時間が過ごせます。
湯量は源泉2本(pH6.8の単純温泉とpH5.5の単純硫黄泉)で毎時15tもあります。
「赤松の湯」の2つに仕切られた湯船は、湯口を絞ることによって40度と42度の温度帯に調節しているそうです。
泉質は単純硫黄泉で、日によって透明だったり、ブルーだったり、真っ白だったり色が異なります。毎日換水・清掃しているとのことで、温泉を大事に思っている経営者の姿勢が伺えます。
丸尾温泉は文政2(1819)年、横尾権太という狩人が発見し、今年は開業200周年となる節目の年。
昭和43(1968)年、新婚旅行ブームに沸く霧島にあって木造から鉄筋コンクリートの宿に移転新築し、霧島プリンスホテルとしてスタートを切った時もありました。
「その当時は定期バスが2、3台連ねてやってきましてね。全部新婚さんで、窓側には帽子をかぶった女性が座っていた」(蔵前壮一会長)。そんな時代もあったようです。
ここの会長さんは人柄の良さが滲み出ている方です。
私は常日頃から「旅館の雰囲気は経営者の性格そのままが出る。社長の人柄が良くないと、スタッフも無愛想だったり、おもてなしがよくなかったりする」と感じているのですが、この宿はいつ行っても、宿や従業員の方の感じがよく、楽しい気分になって帰ることができます。
一昨年、息子さんに代表を譲られ、新たな宿づくりが始まり、人気宿としてますます進化していくのではないかと期待しています。
旅行人山荘
- 鹿児島県霧島市牧園町高千穂字龍石3865
- 全39室
- 1泊2食一人11,800円(消費税・入湯税別)〜
- IN 15時/OUT 11時
- 日帰り入浴 可(540円、12〜15時、貸切風呂は1000円)
温泉水を市が販売
関平鉱泉
国内で温泉水のペットボトル販売をしている会社はいくつもありますが、市が大々的に販売しているケースというのは少ないかもしれません。霧島市が販売する「関平鉱泉」は爽やかで、クセのない飲み口。飲用水のみならず、料理などにも使えます。
一時は、「がんに効く」などともてはやされて、注文が殺到したこともあった話題の温泉。
さて、その威力は??
天保3(1832)年、地元に住む原田丑太郎が神様のお告げによって発見して以来、傷や湿疹、胃腸病、帯状疱疹などに効くとされ、住民が危険な川べりまで汲みに行っていたそうです。
昭和51(1976)年、旧霧島・牧園町の所有となり、昭和56(1981)年、福祉の一環として販売を開始、現在の年間出荷量は2億5000万円くらいを売っているそうです。
「がんに効く」と話題になったのは、
平成15(2003)年に鹿児島大学の研究で、「NK(ナチュラルキラー)細胞の働きを高める」という結果が出たから。週刊誌や新聞は、こぞって「がんに効く温泉水」などと取り上げて、当時の売り上げは5億円くらいになったそうです。
担当者によると、「自治体直営だからやれたこと。成分的にも優れていて、シリカが国内トップクラスの含有量。美容と健康にいい」という話でした。
ドライブスルーのように車でやってきて鉱泉を購入していく人の姿もちらほら。
一般的なお取り寄せ温泉よりも安く、高品質なのはこういった経緯があったからなんですね。
さて、関平鉱泉は購入するだけでなく、立ち寄り入浴で入ることもできます。
工場から高台を見上げると、立ち寄り施設がありました。
浴室に入ると、2つの源泉が湯船に満たされています。
飲んでクセのない関平鉱泉は、浴用でも無色透明。ゆるやかに温もりを伝える、柔らかな単純温泉。36.5度、pH7.6です。
一方、ネズミ色をした新床温泉は、ねっとりと肌にまとわりつく重量感のあるお湯で、浴槽の石も黄褐色に変色しています。
泉質は、pH7.3のナトリウム・カルシウム・マグネシウム-炭酸水素塩・硫酸塩泉。
メタケイ酸269.7mg/kg、鉄分も0.4mg/kgあります。
しっとり感が強く保温効果も高く、数分入れば汗が噴き出してくるほどです。
関平温泉は温度が低いので新床温泉を熱交換して、適温に保っているそうです。
写真と文・野添ちかこ(温泉と宿のライター/旅行作家)