■checkポイント■
≫≫≫ 本場仕込みのイタリアン
≫≫≫ 薪ストーブのあるラウンジでくつろぐ
≫≫≫ 朝食には焼きたてパン
≫≫≫ 飛騨高山駅から送迎ありで楽々
オススメしたい方
【カップル、夫婦、おひとりさま】
古い町並みが人気の観光地、飛騨高山。
最近は、外国人だらけで観光色が強くなりすぎてゆっくりできるイメージがなかったのだけど、久しぶりに高山に行ってみたら、土蔵を利用したお店に手作りのバッグが並んでいたり、造り酒屋で質の高い日本酒化粧品が購入できたり、案外楽しい町歩き&ショッピングができました。
ところで、高山駅での宿泊はどうしよう?
仕事の後の延泊でやってきたから、料金は抑えたい。
かといってビジネスホテルじゃ味気ない。
ちょうど私の要望と合致したのが、こちらのオーベルジュでした。
高山駅から約10分車を走らせると、周囲は木立に囲まれた自然豊かな場所になります。
家具や器にオーナーのセンスが光る
中に入ると、吹き抜けのラウンジに、センスのよいソファやテーブルが置かれていました。
「このソファやテーブルは飛騨の家具ですか?」
宿のスタッフに何気なく質問をしたら、オーナーシェフの中安俊之さんがわざわざ厨房から出てきて、家具の説明をしてくれました。
「これはどこどこの北欧のウェブサイトで購入したものです。こっちの家具は北欧家具の名作家具を扱うキタニのもの、あっちは高山で工房を構える50代の方の作品です」
夕食の1時間前。
バタバタと慌ただしい時間のはずなのに、なんて親切なんだろうーー。
この人は、どんなお客様にも親切、丁寧に答えてくれるんだろうな。
オーナーの対応に、すっかり嬉しくなりました。
宿の開業は1979年。
現オーナー夫婦が3年前(2016年)にシドニーから帰ってきて、先代からペンションを引き継いでリニューアルをしたそうです。
建物は少しずつ改装を施し、家具もアンティークのものに手を入れたりしながら、宿づくりを進めているそうで、オーナーの深いこだわりと愛情が、こういう気持ちのいい空間を作り出しているのだなあ〜と納得。
「ほら。ここの部分」と教えてもらったのが、ストーブの置いてあるスペースの床と壁。
コンクリートの5倍の強度があると言われる「モールテックス」というベルギーの新素材で、コンクリートのようなクラックが入りにくく、水も通さない素材で、左官さんが仕上げたのだそう。
タイルなどと比べても割高だそうですが、「いつか、浴室にこれを使ってみたい」という夢をお聞きするだけで、私まで楽しくなってしまいました。オーナーの優しい人となりを感じられた瞬間でした。
ナチュラルワインとイタリアン
夕食のためにレストランへ行くと、ほとんどが外国からのお客様でした。
外国暮らしの長かったオーナー夫妻であるから、外国客からの評判もいいのでしょう。
なんと9割が外国人客だそうです。
外国からの予約は何カ月も前から入ることが多いので、日本人が予約をしようと思ったらすでに空いていない、ということも多いのだそうです。
グラスワインを頼むと、3種類のワインを試飲させてくれました。
この日、選んだのは甘くフレッシュな果実味のあるアルザス(フランス)のピノ・ブラン。
有機農法で育てたぶどうを使っていたり、酸化防止剤を使っていないなどのナチュラルワインを提供するようにしているそうです。
お料理の一皿目は、タコのカルパッチョ。揚げたナスとホタテの上にケッパー、ごま、ミントが散りばめられ、唐辛子パウダーがきいています。
青のり入りのフォカッチャやグリッシーニなどのパンは手作り。
お次は、エビとアンドゥーヤというちょっと辛いサラミのリゾットです。
オリーブオイルがたっぷり使われていて、クリーミーな中にも辛さがピリリ。
辛味があるのでワインが進みます。
パスタは自家製です。
鹿肉に濃厚なソースが絡んで、ヤギのチーズとコーヒーパウダーがアクセントになっています。
そしてメインは飛騨牛の頬肉。
フォークを入れるとホロホロと溶けていきます。
揚げたひよこ豆、ローストした玉ねぎ、甘酸っぱいリンゴのソースとかぼちゃのソースが絶妙でした。
デザートはイチゴがのったパンナコッタ。チアシードとラズベリーが甘酸っぱさを添えます。
シンプルな客室にステイ
客室はシンプルで機能的。
ベッドルームにはバスタオル、ハンドタオル、歯磨きセット、ドライヤーなどのアメニティが用意されていますし、パジャマも借りることができます。
元々の躯体が古いため、トイレと洗面所が客室にはなく共同スペースではありますが、清潔に、センスよく保たれた空間づくりがされているので、居心地のよい滞在ができます。
風呂は2カ所。鍵をかけて入るスタイルです。
温泉ではありませんが、こちらも一日の疲れを癒すには必要十分。
お料理のグレードを考えると、コスパのよいオーベルジュです。
高山旅行に出かける時にはぜひ選択肢の一つに加えるといいと思います。
オーベルジュ飛騨の森
- 岐阜県高山市新宮町3349-1
- 全7室
- 1泊朝食:7,400円〜、1泊2食:1万2,400円〜(一人宿泊可)
- IN 16時/OUT 10時
- 日帰り入浴 不可
写真と文・野添ちかこ(温泉と宿のライター/旅行作家)