■checkポイント■
≫≫≫ 「スーパービュー踊り子」号で東京から約1時間30分
≫≫≫ 8人部屋があるので3世代旅行にも
≫≫≫ 「花暦」の宿で、椿油づくりを体験
≫≫≫ 温泉プールでのんびり
オススメしたい方
【女性同士、カップル、夫婦、3世代旅行、おひとりさま】
「温泉宿で何もしない」
「温泉宿で贅沢三昧」。
これまではそんな過ごし方をする人が多かったと思いますが、そんな時代は終わりを告げたかもしれません。
温泉地で体の調子を整える「湯治」は、1週間〜10日間、あるいはもっと長期間の滞在が基本とされてきましたが、忙しい現代人がそんなに長い休みを取るのはほぼ不可能。だったら、1泊2日でも効果を実感できる方法を考えよう、と編み出された星野リゾートの温泉旅館ブランド「界」が提案する「うるはし現代湯治」。何もしないわけではない。外側に向かうわけでもない。自分の心と体が喜ぶ内側へと向かう旅。気忙しい現代人にはそんな旅のスタイルが合っているのかもしれません。
気を整え、心身を元気にする「現代湯治」とは?
「ヨガの呼吸法は3拍吸って6拍吐くなどいろいろありますが、界では4拍吸って8拍吐く呼吸法を採用しています。丹田を意識して生命エネルギーを高めていきましょう」(「温泉いろは」を担当する湯守りのスタッフ」。
夕方、「湯治ルーム」に行くと、スタッフが温泉の入り方などを教える「温泉いろは」という無料アクティビティが行われていました。
ここでは、温泉に入浴するのはもちろん、呼吸法やストレッチ、はたまた座禅や瞑想のやり方まで取り入れて、温泉旅の過ごし方を提案してくれます。
入浴法の監修は、いま、テレビなどでも引っ張りだこの温泉療法専門医の早坂信哉氏。
例えば、「かけ湯は最低10回」とか、「入浴によって体から400〜800mlの水分が失われるので、しっかりデットックスするには水分を摂りましょう」といった入浴法の基本から、免疫力、新陳代謝を高めるために、風呂の中で行う呼吸法や足首回し、つま先を前後に動かすストレッチなどを伝授してもらいました。
四季を通じてたおやかな花を感じる
2018年12月21日にリニューアルオープンした「星野リゾート 界 伊東」のコンセプトは「温泉づくし花暦の宿」。地域らしさを感じられる「ご当地部屋」はこれまで2部屋のみだったのが拡大し、全30室すべてが「伊豆花暦の間」に生まれ変わりました。
なかでも「特別和室」は、広々としたリビングルームのほか、4つのベッドが並んだ部屋が2室。エキストラベッドなど入れずに大人8名で泊まることができます。
伊豆の伝統工芸「つるし飾り」の下に、つるし飾りをモチーフにしたクッションが置かれ、小さなお子様が遊べる空間になっています。おじいちゃん、おばあちゃん、お孫さんまでが一緒に泊まる3世代旅行にぴったりです。
客室を入ると、季節の草花をモチーフにした伊豆の切り絵作家さんの作品をモチーフにした「木漏れ日行灯」が出迎えてくれるほか、テーブルの上にはウエルカムスイーツとともに、ほんわかとした消しゴムはんこのイラストが描かれた二十四節気のカード。椿をモチーフにした茶器セットが温かい気分にしてくれます。明るい客室なので、お子様のお食い初めや、古稀、喜寿など長寿のお祝いの席によさそうです。
春の口福をひと足先に味わう
春の訪れが早い伊東では、料理も春爛漫。
先付けは生の桜海老をたっぷりと。
お椀は桜、菜の花、新緑をイメージさせる3色の海老しんじょ。
「宝楽盛り」と名付けられた八寸は、甘海老の小袖寿司や蚕豆玉寄せのほか、色鮮やかなぶぶあられをまぶした白魚束ね揚げ、春の訪れを感じる蕨のお浸しなど。真ん丸のボールは、「フォアグラ苺射込み」。苺のクランチがまぶしてあって甘酸っぱさが口の中に広がります。
お造りは鯵、金目鯛、真鯛。
伊勢海老は豪華盛りです。
さらに鮑の陶板焼きや和牛、熱した椿油で仕上げた「金目鯛の椿蒸し」などご当地ならではの料理が次々に運ばれてきます。
甘味も春をイメージさせる「椿」と「桜」の2種類から選べて、
「花暦」の宿にふさわしい口福を味わえました。
プールと温泉でリラックス
この宿は自家源泉を持つ宿でもあることから、プールにも温泉が使われています。
プールは少し温かい32度くらい(源泉温度は約45度)の温度ですので、春でも暖かい日には十分に泳ぐことが可能です(朝7時〜11時、夕方15〜18時が利用可能)。
夏には、伊東の「松川タライ乗り競争」を真似て、タライを浮かべてお子様を遊ばせるアクティビティもやっているそうですよ♪
大浴場は男女1カ所ずつ。内風呂は以前から使っていた檜風呂を生かし、開放的な露天風呂も併設しています。湯口が中央にあって、新鮮な状態で源泉が湧き出るように設計されています。
湯上がりには脱衣所に置かれた椿油を、肌に塗りこみましょう。
椿油のミストと、非加熱・無ろ過の椿油の2本が使い放題とは太っ腹です。
椿油は皮脂の成分と近い質の高いオイルで、美肌の湯の入浴後に塗れば、翌朝は全身もっちりツヤツヤお肌になれます。
国家資格者によるマッサージ
温泉の効果を高めるにはマッサージも効果大。界 伊東では、確かな技術を持つ国家資格によるマッサージを客室で受けることができます。
「腰が丸く、顎を突き出してパソコンを打っていませんか?」
指圧師さんから、普段の姿勢まで言い当てられて、ちょっとびっくりするとともに、日頃の疲れを実感。自分の体と向き合う時間は非日常の温泉旅ならではの大事なひとときかもしれません。
あん摩マッサージ指圧師の川和田さんは浪越指圧の専門学校で国家資格を取得。生まれ故郷の伊東で指圧師として勤務しているそうです。
この川和田さんの指圧が、押すところ、押すところ、ドンピシャでイタ気持ちいい刺激を与えてくれます。
腰、背中、肩、首、足、腕、お尻。全てが凝りに凝っているのをまずは実感。温泉で温まった体に、よく効く指圧マッサージ。次回もリピートしたい気分になりました。
世界三大オイル、椿油づくりを体験
この宿は「花暦」の宿。エントランスのつまみ和紙で四季折々の花の色を表現した設えやフロント上部の「花暦スクリーン」など「花」をテーマにした装飾がインテリアになっていますがそれだけではありません。こんなステキな体験が用意されています。
チェックインをしたらぜひ参加したいのが、ご当地楽の「椿油づくり体験」。
日本原産のヤブツバキの種から採れる椿油は、化粧品が市販されていなかった江戸時代から、日本女性たちが美容オイルとして使ってきたもの。特に黒髪を艶やかに保つヘアオイルとして優れていて、オレイン酸という皮脂に近い成分を多く含んでいるそう。伊豆大島が特産ですが、ここ伊東でも椿の花が名産品です。
体験では、黒い固い殻をペンチのようなもので割り、油絞り機に4粒入れてゆっくりと圧搾していきます。コツは、力任せに押しつぶさず、ヒビを入れる程度。油絞り機のハンドルはゆっくり回すと多くのオイルがとれるそうです。
最後は滲み出た油をガラス瓶に詰めます。
計3回(15時30分、16時15分、17時)、チェックイン時に先着順の予約で、体験料は無料。
「搾りたての油はろ過をしていないので3日ほどで使い切ってくださいね。全身にお使いいただけます」。対応してくれたスタッフさんによると、かかとやひじなど、皮膚の厚いところに塗るといいそうです。
温泉だけでなく、心も体もキレイに元気になれる宿。
癒されポイント目白押しです。
星野リゾート 界 伊東
- 静岡県伊東市岡広町2-21
- 全30室
- IN 15時/OUT 12時
- 1泊2食2万5,000円〜
- 日帰り入浴 不可
写真と文・野添ちかこ(温泉と宿のライター/旅行作家)