木の香漂う和み宿 〜強羅花扇 円(まど)かの杜〜
フロントを入って、まず圧倒されるのは、玄関の上がり框(かまち)と天井の見せ梁に使われた太い木材。分厚い一枚板のカウンターは神代欅。無垢材を贅沢に使ったテーブルと椅子がロビーを彩ります。
これだけの宿を造ろうと思ったら、木材選びから始まっていったい、何年かかることでしょう。箱根・強羅はもともとお金持ちの別荘地だったという場所柄もあり、ゴージャスな宿が多いのですが、ここ円かの杜の居心地のよさは群を抜いています。
その理由は、木材蒐集家であるオーナーのこだわり。
本家が飛騨高山にある花扇グループの社長が全国から集めた木材をこの宿にも投入したのです。
「木は呼吸している」といいますが、本物の木材は、湿気を吸ったり吐いたり、湿度を調節する働きがありますので、これだけの木材が内装に使われていると、気持ちも和むものですね。
1泊するだけで、木の空間の威力を感じることができました。
また、全館畳敷きにもこだわっていて、館内はすべて裸足で歩けます。
滞在すればするほど、快適度が増すのは本物空間の中にいるからこそでしょう。
もう一つ、感動したのはアメニティの充実度です。
この宿のシャンプー、コンディショナー、ボディソープは大浴場も客室も玉の肌石鹸。
わたしが一番驚いたのが歯ブラシでした。
このクラスのお宿のアメニティは充実していることが多いですが、どんな高級宿でも歯ブラシはそんなに変わり映えはしません。
しかし、この宿では豚毛の天然毛を使った歯ブラシがセレクトされていました。自然派志向の化粧品類は気分をアゲてくれます。
また、湯上がりのお茶はこの日は、「こくとう茶」。生姜の効いた黒糖のお茶は他ではあまり見たことがなくて、細やかな気遣いに感動しました。
2本の源泉に入り比べ
さて、大浴場へと出かけると、森林浴ができる絶景露天風呂が待っています。
湯船が2つに仕切られているのは、「ぬる湯」と「あつ湯」。
露天風呂にも大浴場にも「ぬる湯」と「あつ湯」両方の浴槽が設えてあるのは非常に珍しいケースです。
鳥のさえずり、葉ずれの音を聴きながら、季節に合わせた温度の浴槽に入り、心ゆくまで湯と戯れることができます。
白濁のにごり湯に比べて、無色透明のお湯は物足りない?
そう思われる方がいるかもしれませんが、この温泉のすごさは入ってみれば分かります。
箱根火山のエネルギーをダイレクトに伝えてくれるパワフルなお湯なのです。
宿には2本の源泉があります。
1本目は駐車場でモクモクと白い噴煙をあげる、源泉温度90℃を超えるナトリウム-塩化物泉。
2本目は60℃程度のナトリウム-塩化物・硫酸塩・炭酸水素塩泉。
いずれも塩類泉なので似たような泉質のように思えますが、90℃を超える高温泉はまさに火山由来の温泉。
塩分も濃くてパワフル。
一方、硫酸イオン、炭酸水素イオンが多い方の源泉はまろやかでやさしい泉質です。
温度調節のための加水はしていますが、かけ流し。
大浴場と露天風呂は異なる泉質なので、入り比べをしても面白いですね。
強羅の温泉宿は引き湯している宿がほとんど。
自家源泉を持ち、しかもかけ流しで使っているので、温泉好きを自認する人もきっと満足できることでしょう。
お部屋出しでゆったりと
夕食は、食事処か客室でいただきます。
ただし、お部屋出しを希望される場合は予約時にお部屋出ししてもらえる客室を選ぶ必要があります。
お料理は、季節のお野菜をふんだんに使った13品の会席料理。
甘鯛や鮑、睦など相模漁港で揚がる新鮮な魚貝類が、彩りのよい器に盛られて供されます。
目玉はA5ランクの飛騨牛ステーキ。脂が多いお肉ですが、夏野菜とともにライムとポン酢でさっぱりといただきました。
夕食後は、一枚板のカウンターがある蔵のバーで、JAZZを聴きながらカクテルを。
寒い季節には、温泉プラス岩盤浴でまったりすることもできます。
旅慣れた大人が満足できる温泉宿をお探しなら、こんなお宿がおすすめです。
強羅花扇 円かの杜
- 神奈川県足柄下郡箱根町強羅1320-862
- 全20室
- IN 14時/OUT 11時
- 1泊2食本館40,150円(1室2名利用時、消費税・入湯税込)〜
- 日帰り入浴 不可