にごり湯と八幡平の自然を満喫! 〜峡雲荘〜(岩手県)
「ホーホケキョ」。
朝の露天風呂で、ウグイスの鳴き声が聴こえてきました。
白濁のにごり湯とブナやナラといった緑の木々のコントラストが美しい露天風呂。
湯船の真ん中には巨石が配され、野趣あふれる湯浴みが楽しめます。
地熱を暖房にも利用
ここ松川温泉は、1966年に日本初の商業用地熱発電所が稼働した場所。
「地熱発電」とは、地下に存在する熱エネルギーを利用して発電を行うもので、岩手山や八幡平といった火山に囲まれているこの地は、熱エネルギーが豊富なため地熱発電所が建てられ、その地熱を使って宿泊施設の室内暖房もまかなわれています。
訪れたのはまだ肌寒さの残る5月。
効きすぎた暖房が暑いくらいで、「窓を開けて室温を調節してください」という注意書き通り、窓を開けっ放しにしてちょうどいいくらいの室温でした。
館内は2006(平成18)年に改装されているので古い湯治場のイメージは全くなく、和の趣きのあるモダンな建物になっています。
これなら雪に覆われる真冬でも快適に過ごせそうです。
浴室は、女性用内風呂と露天風呂のほかに、混浴の露天風呂もあります。
混浴の露天風呂は1カ所。
女性は大浴場とは別の入口まで移動しなければなりませんが、男性は内風呂を通って外に出ると混浴の露天風呂へとつながっているので、カップルやご夫婦が星を見ながらロマンティックに語りあう……なんてこともできてしまいます。
内湯には洗い場こそありますが、シャワーはなし。
体や髪の毛を洗うときには、上がり湯の長方形の大きな桶から湯を汲んで、カランの水と混ぜて使います。
温泉水はにごり湯なので酸性のように見えますが、pH5.3-5.5の中性なので、目に入っても染みることはありません。
ドライヤーは客室や脱衣所にはなく、貸し出し制。
ちょっと不便を感じるかもしれませんが、これも、山の宿ならではの希少な経験かもしれません。
「トイレはウォッシュレットにしたかったけれど、すぐに錆びてしまうボイラーを設置していないのでつけられなかった。硫黄泉なのでテレビは3年に1回は壊れてしまうし、パソコンは1年もつかどうか……。レジの寿命は5年」
と話すのは宿主の高橋俊彦さん。
金属はすべて錆びてしまうから屋根も配管もステンレス製を採用しているのだとか。
硫化水素ガスの強い温泉宿ではよく聞く苦労話ですが、その中でもトップクラスで管理が大変な温泉のようです。
そんな自然環境厳しい山宿ならではの楽しみが、朝6時30分〜周辺の自然散策をする「朝の散歩」。
ガイドさんから植物や木の説明を受けながら、一緒に50分ほど歩くもので、土・日曜、平日1回の週3回ほど実施しているそう。
開催しているときに宿泊すればラッキー!
季節のよいときに参加してみたいものです。
幻の魚とヘルシーな短角牛
お料理はというと、素朴に見えますが、素材にはこだわっています。
幻の肴といわれるイトウの刺身、脂肪が少なくて淡泊な旨さがあるホロホロ鳥、岩手県中山間部で飼育される高タンパクでヘルシーな短角牛、春は山菜料理がたくさん供されます。
このエリアの冬の雪深さを象徴するものが、フロント前に飾られていました。
昭和初期の頃の木製のスキーです!!
バックルには、「東京三省堂」の文字がありました。「三省堂」といえば、本屋さんですよね。
でも、当時は、スキー板も輸入していたらしいのです。
リゾートでのウインタースポーツの先駆けを象徴するスキー板かと思ったら、当時は生活のための道具とのこと。
郵便屋さんが郵便を届けるために履いていたスキー板なのだそうです。
当時もいまも雪深いことは変わりなし。
八幡平の自然に抱かれたいで湯は、春夏秋冬の自然美が何よりのごちそうです。
ちなみに、本館の自炊部に泊まると1泊目は3700円、2泊目が3200円という破格の料金。
本館での湯治場の伝統も守りながら、現代的な新館。もある、両刀使いの宿なのです。
峡雲荘
- 岩手県八幡平市松尾寄木松川温泉
- 全24室(新館:トイレ付き17室、本館:トイレなし7室)
- IN 15時/OUT 10時
- 1泊2食(1室2名利用)一人13,000円〜(消費税・入湯税別)
- 日帰り入浴 可(入浴のみ大人600円、8時〜19時、大広間利用大人800円、10〜15時)