“奇跡の湯”で極上の湯浴み 〜白根館〜(山梨県・奈良田温泉)
杖をついてきた人が、杖を忘れて帰ってしまった――。
温泉地でそんな逸話を聞くことはよくありますが、ここ白根館でもそんな奇跡体験は珍しくないといいます。
「このあいだも、『顔面神経痛でまぶたが動かなかった人が、1泊したら動くようになった』し、『歩けなかった人が歩けるようになった』なんていうことはよくあることだよ」と話すのは、宿のご主人、深沢守さん。それだけ効果が実感できる温泉だからこそ、ファンも多いようで、湯船でご一緒した80代と思しきご婦人は20年以上もこの宿に通っているとのことでした。
「昔はトンネルもなかったから、もっと行きづらかったのよ」。
首都圏からご夫婦2人の温泉旅。若いときは遠くにも出かけていたけれど、いまはこの宿に決めているのだといいます。
ぬるぬるを通り越して、肌をなでるとにゅるんにゅるんの肌触りをもつ美肌湯。
泉質は含硫黄-ナトリウム-塩化物泉で、糖尿病やアトピー性皮膚炎、痔症、冷え性、皮膚乾燥症、慢性湿疹、末梢循環障害などに効果があるとのことです。
その心地よさは誰もが虜になること間違いなし。
GW前の平日というのに、ほぼ満室。
人気のお宿には、足しげく通うリピーターの存在が大きいのかもしれません。
食べ応え満点の山里料理
料理の美味しさにも定評があります。
「いまは息子さんに変わって少しこじゃれた料理になった。味は変わらず美味しいよ」とは別の浴客の話。
かのし(鹿肉の方言)のしゃぶしゃぶは、ご主人が冬の間に仕留めた鹿肉。
しめじとネギ、水菜ともやし、大根などたっぷりの野菜の入っただし汁にさっと通してポン酢でいただきます。
何枚も重ねた生湯葉は厚みがあってぎゅっと旨みが詰まっていて食べ応えがあるし、こんにゃくは生芋から手づくり。
外はカリっと、中はクリーミーな蕎麦がきは奈良田の郷土料理で、絶妙な揚げ具合。
サラダはレタス、きゅうり、にんじん、大根に、玉ねぎとにんにくのすりおろしドレッシングがベストマッチ。
川魚の手づくり燻製は、なんと塩と桜チップだけで仕上げたというのに、びっくりするほど深みのある味わいです。
山の伏流水を使っているからなのか、水がおいしいところで育った調理人がつくっているからなのかはわかりませんが、一つ一つが感動的なおいしさでした。
体の芯から元気が出てくる酸味のあるどぶろくも宿オリジナル。これはぜひ味わっていただきたい逸品です。
美肌の湯のヒミツ
全11室のうち、トイレがあるのは4室のみで、多くの客室はトイレと洗面所が共同の無骨な山宿です。だから、快適な今風の宿を思い浮かべて行けば、ミスマッチを起こしてしまうこともあります。
正直、不便さはあるのだけれど、その不便さが気にならないほどの圧倒的な湯ヂカラと料理です。
ところで、こちらの温泉はpH9.1、アルカリ性の温泉ではありますが、美肌の湯のヒミツはどんなところにあるのでしょう?
ご主人に聞いてみると、「美肌の湯とは、カルシウム分とマグネシウム分が少なくて、pHが高いところがつるつるになる」という調査結果が出ているそうです。
特徴的なつるつる、ぬるぬるの温泉は、温泉成分が濃すぎてもだめなようです。しかも、白根館の源泉は絶妙な温度で湧き出ているため、ちょっとぬるめで長湯もできるため、極上の湯浴みが楽しめます。常連さんに愛される奇跡の湯を体験しに出かけてみませんか。
白根館
- 白根館
- 山梨県南巨摩郡早川町奈良田344
- 1泊2食トイレなし11,000円、トイレあり14,500円(消費税・入湯税別)〜
- 全11室(トイレあり客室は4室)
- IN 15時/OUT 10時
- 日帰り入浴 可(大人1000円、14〜16時)