囲炉裏のごっつをと湯三昧 〜湯元長座〜
静かな山里にしんしんと雪が降る。
わたしが訪れたのは12月半ば過ぎ、雪の降り始めの時期でした。
ここは、奥飛騨・福地温泉。
いまでは各地でよくみられるようになったけれど、「古民家を移築した宿」の走りともいえるのがこちらの宿。
新潟の豪農の館や飛騨の合掌造りの家を移築、この館が建ってもう30年になるというから、10歳の頃に訪れた人が、人生折り返しの40歳になり、自分の家族を連れて再びやってくるほどの長い年月が流れたわけです。
現代的な建築の場合、どんなに素敵でも年月とともに少なからず経年劣化してしまうけれど、古民家の宿は"経年良化"していくものなのだと感じるのは私だけではないはずです。
温泉に入りに、早速大浴場へと向かいます。
源泉はpH6.6のナトリウム−炭酸水素塩泉。4本の自家源泉の混合泉です。天井は高く、古民家移築の太い柱を生かした大浴場は人工物を極力排しているから、非常に居心地のよい空間です。
冬の外気に冷えた体には少し高く感じる温度でしたが、素晴らしくいいお湯でした。
湯殿の柱は大人が抱きついてちょうど手が回るくらいの太さ。壁に沿わせた手すりにも曲木が使ってあって味わいがあります。
リニューアルから30年が経っているけれど、ますます、どっしりと重みを増しているような重厚感を感じます。年月とともに磨かれゆく宿の力強さをここでも感じました。
露天風呂では雪がちらちらと舞っていました。
このときはまだ積もってはいなかったけれど、いまは一年のうちでも最も寒さが厳しい雪のシーズン。すっぽりと雪を被った露天風呂はそれだけで楽しい気分になれることでしょう。
囲炉裏を囲んで、奥飛騨の味覚を
囲炉裏を囲む奥飛騨の里山料理はそれは楽しい夕餉でした。
大女将手づくりの梅酒から始まって、他ではちょっと見たことのない特徴的な料理の数々が並んでいました。
まず目を引いたのが、お造りで、岩魚吹雪和えと飛騨鱒の黄身香煎和え。
白川村発祥の「すったて鍋」は、一晩水に浸した大豆をすりつぶした「すったて」を使った白いスープのお鍋でやさしい味わい。
座付は、鱒と鴨肉とプロセスチーズの自家製燻製、百日鳥昆布押し、鮭白子酒粕焼き。
前菜は岩石豆腐、林檎のしんびき揚げ、鮭八幡の丹波焼、柿南京(かぼちゃを練って柿に見立てたもの)、棗の甘露煮。山の味覚がさまざまに形を変えて供されます。
囲炉裏で焼く串のものは、古地鶏、岩魚、五平餅。
さらに飛騨牛のすき焼き、クワイ、チンゲン菜、ニンジンを使った野菜饅頭などボリュームたっぷり。
なによりも一番のごちそうは、「米処、新潟のお米にも負けないほどの」(スタッフ談)お米とお漬物。水がいいから米もうまい!飛騨らしさを追求した素晴らしいメニュー構成でした。
翌朝、もう一つの露天風呂へ
朝湯は貸切風呂へ。
内湯の先の扉の向こうには絶景が広がる露天風呂がありました。雪景色を眺めながらの湯浴みは最高です。
さらに、建物を出て3分。道路を渡った先に、もう一つ、忘れちゃいけない「かわらの湯」があります。
ちらちらと降る雪とゴウゴウと流れる川を眺めて入れる贅沢なお風呂です。
雪を踏みしめ、たどり着いた先には、暖房の入った脱衣所のある湯小屋がありますので、安心して出かけましょう。
こちらは大浴場とは異なる泉質で、湯小屋のすぐ下の竹やぶの下から毎分60?の単純温泉が出ています。木の切り株を伝って流れ落ちる湯は、フレッシュで、つるつる、しっとりするいいお湯。
茶色く、木肌や床に析出した温泉成分が気になりますが、年5cm以上固形化する成分の濃いお湯だとか。
そんな成分の濃い温泉が単純温泉??温泉分析書には「単純温泉」と書いてありましたが、以前とは少し成分が変わったのだそう。
寒いので、冬季は行かない人も多いかもしれませんが、行かなきゃ損。「宿泊者専用」の特権です。
湯元長座
- 住所:岐阜県高山市奥飛騨温泉郷福地温泉
- 全27室(うち囲炉裏付き15室)
- IN 15時/OUT 10時
- 1泊2食 17,000円(消費税・入湯税別、一人宿泊可能+3000円)〜
- 日帰り入浴不可
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