道後温泉の中心街からほんのちょっと入っただけなのに、大和屋別荘には別世界の風が吹いているような思いに包まれる。表の喧騒はまったく届かず、ただ静けさだけが胸にしみる。数寄屋造りの純和風旅館の粋とはどういうものか、この宿を訪ねるとわかったような気持ちにさせられる。さりげなく飾られた花、かすかに匂う香、シンプルに徹したかのような美意識、そういった繊細な気遣いが館内のいたるところに感じられる。
ロビーや浴場への通路から見える中庭は、それほど大きくはない。だからこそ見る人の視線も集中し、よりきめこまやかな手入れが必要になる。この中庭のありように大和屋別荘の心が凝縮されているともいえそうだ。数寄屋造りの客室は茶室を思わせる意匠で、床の間にはこれもさりげなく高浜虚子や山頭火らの句の掛け軸がかかっていたりする。本物だけが持つ凛としたもてなしにも宿の精神が垣間見られるようだ。
「山吹」の間の椅子席。客室に置かれた洗練された調度品は、鑑賞に値する。厳選された家具も、結局は気品あるシンプルさに落ちつくのかと思わせるほどだ。天井や障子の桟の美しさ、青畳の清々しさ、間接照明の柔らかさ、椅子の座り心地の良さ、そして静けさの中に身をゆだねる心安らぐひととき。オーバーな表現のような気もするが、それがこの宿を訪ねた印象であり、また実感でもある。
おいしい料理と道後の名湯でゆっくりとくつろぎ、安らいでいただき、翌日からの元気な一歩のお手伝いができたらと、そんな忘れかけた日本を残している宿でありたい、と思っております。(若女将の奥村美恵さん)
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