■checkポイント■
≫≫≫ 鶴雅グループエグゼクティブクラス「座」シリーズの最高峰
≫≫≫ 縄文時代の地層や土器と親しむアートホテル
≫≫≫ 食事処もバーも飲み物はオールインクルーシブ
≫≫≫ 全室レイクビュー、露天風呂付き
オススメしたい方
【カップル、夫婦、特別な記念日、エグゼクティブ】
海外の富裕層が満足しうるラグジュアリークラスの宿を北海道で複数展開する鶴雅グループの最も新しい宿、2019年5月1日にグランドオープンした「しこつ湖 鶴雅別荘 碧の座」を訪ねました。

しこつ湖 鶴雅別荘 碧の座 外観 《写真:野添ちかこ》
冬でも凍ることのない、透明度の高い支笏湖のほとりにあり、水の豊かな“支笏湖ブルー”の「碧」をテーマカラーとした「座」シリーズの最高峰。全室支笏湖を臨むラグジュアリースイートです。
縄文人の暮らしを感じるアートな宿
建物は水庭にぐるりと囲まれ、木のオブジェでデコレーションされた長いエントランスを通って入口へと向かいます。

玄関へと向かう外廊下 《写真:野添ちかこ》
エントランス空間の右手には「万歴継承壁」という縄文時代の地層をイメージした土壁があります。縄文文化からアイヌ文化、そして現代へと続く1万年もの長い時の流れを表現した壁は、左官職人の久住章さんがコテを持って自ら製作、地層の中には1万5000個もの本物のしじみの貝殻が埋め込まれています。
千歳市にあるキウス周堤墓群は縄文時代の墓としては最大規模で、縄文時代にこの地に豊かなムラが存在していたことが分かっています。エントランスではこのような縄文から現代までが連なる歴史を色の異なる土を重ねて表現しています。

縄文時代の地層をイメージした「万歴継承壁」 《写真:野添ちかこ》
館内には「縄文」をテーマにしたいくつかの仕掛けがあります。
ラウンジにそびえ立つ暖炉は、縄文土器や土偶をモチーフにしたデザインで、左官アーティストの久住章さんが手作業で仕上げた作品です。

土器や土偶をモチーフにした暖炉 《写真:野添ちかこ》
鶴雅グループの象徴ともなっているアイヌ・アートの木の彫刻たちが館内を彩り、さらに、末広遺跡(千歳市)から出土した縄文後期の本物の深鉢型土器や注口土器などが博物館のように飾られています(千歳市埋蔵文化財センターより貸し出し)。
また、久住章さんが作業期間中に出会った冬から早春の支笏湖の風景を「土壁ギャラリー」として展示、宿はさながらアートホテルのようです。

館内に展示された縄文土器や土壁ギャラリーの作品 《写真:野添ちかこ》
ラウンジではJBLパラゴンのスピーカーから音楽が流れ、ラウンジの一角にはお茶のお手前体験ができるスペースなどもあります。
全て100平米以上の上質空間
客室はラグジュアリーな宿ならではのおもてなしで、サンルームにウェルカムスイーツとウェルカムチョコレート、さらにはシャンパンまで置かれています!

客室のウェルカムシャンパン 《写真:野添ちかこ》
冷蔵庫の中にもミネラルウォーター、英国の鉱泉水、お茶などが入っているし、滞在中のバーやルームサービス、料亭でのドリンクはすべて無料のオールインクルーシブです。
寝心地のよいベッドと大きなソファ、100インチの大型テレビなどを備えた客室は最低でも100㎡もの広さがあり、トイレや化粧室、荷物を置くクローゼットに至るまで広々としています。

トイレやクローゼットまで広々。ラグジュアリー感漂う客室 《写真:野添ちかこ》
質のいいタオル地のパジャマ、作務衣、バスローブ、ふかふかの今治タオルなど肌に触れるもの、目に留まるもの、全てが上質。ドライヤーはダイソン、ベッドに置かれた枕以外にも選べる枕が備え付けられてあって、至れりつくせりです。

何でも揃っていて、快適な滞在ができます 《写真:野添ちかこ》
客室タイプには、ダイニングキッチンを備えた「スイートヴィラ」(120~140㎡)、メゾネット形式の「エグゼクティブスイートヴィラ」(210~270㎡)もあります。

2階建ての「エグゼクティブスイートヴィラ」 《写真:野添ちかこ》
この宿に大浴場はなく、各客室に温泉が引かれた露天風呂とジェットバスが付いています。
温泉は滑らかな優しい肌触りのナトリウム-炭酸水素塩・塩化物泉です。
循環ろ過はしているものの、成分総計が5,364mg/ℓもあるからか、とろりとした温泉の個性がしっかりと感じられます。

全室温泉の露天風呂付き 《写真:野添ちかこ》
北の国ならではのこだわり懐石
料理は料理屋「水白」にて。ライトアップされた水庭を臨む個室です。

料理屋「水白」の個室 《写真:野添ちかこ》
飲み物はオールインクルーシブ。飲み物のラインナップはノンアルコールのスパークリングジュースやシャンパン、赤・白ワインも複数あり、かなり充実しています(一部有料メニューあり)。
日本酒は北海道の「丹頂鶴」(千歳鶴)や増毛町の「国稀」、栗山町の「北の錦」のほか、新潟、山形、島根、鳥取、福岡の酒蔵の酒が揃っていて日本酒通もきっと満足できるはず。

日本酒もオールインクルーシブ 《写真:野添ちかこ》
焼酎は鹿児島、長崎、熊本、大分、宮崎から取り寄せた芋・麦・米焼酎が幅広いラインナップで揃っています。
「初口」はオホーツク海産の鱈場蟹とフォアグラを使ったテリーヌ。
オレンジ色の蟹の外子とグリーン色の菜の花が色のアクセントになっています。

初口 《写真:野添ちかこ》
2品目は「新雪」。淡い新雪をイメージした一皿で、穴子寄せと百合根の上に、真っ白い雪をイメージした豆乳エスプーマのふわふわの泡がのり、幸せな気分になります。

「新雪」のお皿 《写真:野添ちかこ》
3品目は「一番出汁」。オホーツク海で育った牡丹海老の出汁がお腹の中にほわっと広がる優しい味わい。
「季」のお造りは本鮪、松川鰈、蝦夷馬糞雲丹とぶどう海老。脂たっぷりの本鮪はわさびをたっぷりのせて。頭が紫色のぶどう海老は漁獲量が少なく幻の海老といわれていて、味が濃厚です。お酒は淡麗で華やかな香りが特徴の日本最北の酒蔵「国稀」の大吟醸をいただきました。

「季」のお造り」 《写真:野添ちかこ》
箸休は雲丹の茶碗蒸し。
メインの「素」は三石和牛かアンコウを選べますが、私はアンコウをセレクト。お皿の上では陰干しして焼いたアンコウと梅煮のアンコウの2種類が楽しめます。ぷっくりと焼き上げたアンコウの上に味噌がのり、グラノーラなどが添えられていて斬新な味わいです。

メインはアンコウの2種盛り 《写真:野添ちかこ》
強肴は、羅臼産キンキと蝦夷鮑。風干ししたキンキと、蒸し焼きした鮑をローストした十勝豆と一緒にいただきます。北の国ならではの素朴ながらも上質で華やかなメニューでした。
お食事は土鍋で炊いた北寄貝の炊き込みご飯です。普段、炭水化物はあまり食べないのですが、美味しすぎてお替わりしてしまいました。

土鍋ご飯も食欲の進む彩り 《写真:野添ちかこ》
食後に紅茶を選んだら、香り豊かなオリジナルティーのボトルが運ばれてきました。
選べる楽しみっていいものですね。
私はレモングラスとペパーミントのハーブティーを選びました。

食後のお茶も選べます 《写真:野添ちかこ》
JAPAN BLUEの藍染め体験
縄文文化やアイヌ文化を強く意識したこの宿。
エントランスの扉やスタッフの制服に北の縄文をモチーフにデザインされたロゴマークが入っていたり、館内で着用する羽織りにアイヌ文様をモチーフにした刺繍があしらわれているなど、この地の文化が身近に感じられます。
ラウンジ「青陽」にはオヒョウと呼ばれる木の内皮の繊維で織られたアイヌ民族衣装が置いてあるので記念撮影もできます。

軽い着心地は木の内皮の繊維で織られているから。アイヌ衣装を着て記念撮影はいかが 《写真:野添ちかこ》
また、絵ハガキや折り紙、色鉛筆の置かれたレターギャラリーでは、旅先から大切な人に手紙をしたため、館内のポストから世界中に無料で郵便が出せます。

万年筆や色鉛筆が自由に使えます 《写真:野添ちかこ》
さらに、「碧」をテーマにしていることもあって、日本の伝統的な染めの技法である藍染め体験も行っています。藍染めは東大寺正倉院に収蔵されていたことから、奈良時代には日本で加工方法が確立していたと言われており、明治期には日本を訪れた外国人から「JAPAN BLUE」と呼ばれ、その美しさが評価されていたそうです。

藍染めは、発酵の妙で布を染める伝統的技法。模様もさまざま 《写真:野添ちかこ》
使用する藍の実は、北海道の伊達市や徳島から取り寄せているそうです。
ハンカチなら30分、Tシャツなら1時間程度で体験できます(11~22時対応)。

何を使うかによって模様の出方が変わります 《写真:野添ちかこ》
ビー玉や輪ゴム、木の棒などを使って、「くくる、絞る、止める」などして、甕の中で攪拌した藍建液に1分ほど浸して引きあげ、空気に晒すことで酸素と反応して藍色に変化します。

甕の中の藍建液に布を浸して色を染めていきます 《写真:野添ちかこ》
発色したらまた染めて、空気に晒す。それを何度か繰り返したのち色止めをして、あとは流水でザブザブと洗えば出来上がり。

水が透明になるまで、何度も水で洗います 《写真:野添ちかこ》
アイヌ文化、日本文化を五感で感じて、クリエイティビティを刺激する滞在ができそうです。
しこつ湖 鶴雅別荘 碧の座
- 北海道千歳市支笏湖温泉
- 全25室
- 1泊2食8~22万円(消費税・入湯税別)
- IN 14時/OUT 11時
- 日帰り入浴 不可
写真と文・野添ちかこ(温泉と宿のライター/旅行作家)