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宿の中で時空を旅する「宮城県鎌先温泉 時音の宿 湯主一條」

  • 西村愛
  • 時音の宿 湯主一條

時音の宿 湯主一條

フード&トラベルライターの西村 愛です。

この日の旅は「温泉大賞アンバサダー」として、開湯から600年という長い歴史を持つ宮城県白石市にある鎌先温泉へ。
温泉文化というものは、日本の豊かで個性的な自然から生み出されるもの。
皆さんにもお好きな温泉がきっとひとつやふたつ、あるのではないでしょうか。

この温泉地は、白石の農夫が鎌の先で木の根の辺りをかき分けたところ、白い煙と共に温泉が湧きだしたことから、「鎌先温泉」と言われるようになりました。

東京から最寄り駅・白石蔵王駅までは新幹線の旅。電車旅を盛り上げるのは駅弁。最近はバラエティ豊かだなぁ。あっという間の2時間。

電車旅を盛り上げるのは駅弁

駅に到着して思い出しました!そうですね、宮城と言えば「こけしの街」。
伝統工芸として細々とではありますが、いくつもの系統が現代にもその技を受け継いでいます。

白石蔵王駅
白石蔵王駅

駅からはタクシー移動。途中、冠雪した蔵王連峰や白石城を見ながら15分ほどで到着します。
蔵王の山懐に抱かれた温泉宿「時音の宿 湯主一條」にお世話になります。

時音の宿 湯主一條

車が1台やっと通れるほどの坂道。なので湯主一條では下の駐車場から送迎してもらえます。
ここはもともと沢だった場所。
鎌先温泉は、V字に切り込んだ谷間にある小さな温泉街なのです。

鎌先温泉街

到着するとロビーに通され、暖炉の前でおもてなしのお茶をいただきました。
宮城名物のずんだもち。枝豆の美味しさをシンプルに味わえる和菓子。
温かい緑茶を飲みながら暖炉の火を眺めていると、スッと気持ちが落ち着いてきました。

ロビー
宮城名物のずんだもち
宮城名物のずんだもち

さてこちらの宿、まずはお湯からご紹介しましょう。
湯主一條は2つの自家源泉を持っています。
ひとつは「鎌先の湯」。山中にあり、おいそれとは見に行くことが出来ない源泉。ここが600年前に遡る、鎌先温泉の名の由来になったお湯です。宿では「薬湯」とも呼ばれ、大浴場はかけ流しです。
男湯、女湯どちらも石造りとは思えない柔らかさのある意匠で大変雰囲気があります。
泉質はナトリウム泉で、湯上り後もぽかぽかが続きます。

自家源泉「鎌先の湯」
宿では「薬湯」ともいわれている
大浴場は源泉かけ流し

もうひとつは「洞窟の湯」。手彫りで洞窟を掘っていたところ冷鉱泉が湧き出でたということで、宿の奥へ行くとその洞窟入り口を見ることができます。

「洞窟の湯」

洞窟の湯は宿の露天風呂に使われています。
内風呂も季節ごとの移ろいを自然の中に感じられるガラス張り。
これら2つの自家源泉により、宿の中で湯めぐりが出来ちゃいますね!

自然の中に感じられるガラス張り
洞窟の湯は宿の露天風呂に使われています
洞窟の湯は宿の露天風呂に使われています

この2つのお湯を自分のお部屋でも楽しみたいならば、スイートに泊まりましょう。
なんとこの湯主一條、高いお値段の部屋から埋まっていってしまうというほどにスイートが大人気。
リピーターの中ではそれぞれ777、555と部屋番号で呼ばれる「一條スイート」、「湯主スイート」では、洞窟の湯をかけ流しで使えるという贅沢この上ないラグジュアリー感を味わえます。

777号室「一條スイート」は100uという広々とした一室。暖色系でまとめられたこの宿では最上級のお部屋です。

777号室「一條スイート」

間取りが良く広さ以上に大きく見えます。
ベッドはシモンズ社製、キングサイズ2台が軽く入ってしまうほど。

777号室「一條スイート」

露天風呂には宮城県でしか産出されない「伊達冠石」を使い高級感を醸し出しています。
お客様が到着する時間に合わせ、到着後すぐにお風呂に入れるよう清掃、お湯入れを行っているとのことでした。
内風呂は温泉ではありませんがバラの花が用意されていて、花びらを浮かべて入ることも出来ます。

777号室「一條スイート」露天風呂
内風呂ではバラの花が用意

555号室「湯主スイート」はまた違う意匠を持つ部屋。こちらも広さは73uと十分。

555号室「湯主スイート」

湯主スイートの魅力は檜のお風呂。部屋に入った瞬間に檜の良い香りがふわっと漂い、日々のストレスから一気に解放されるような心の癒しを得られる部屋です。
窓際の畳スペースからは小さな神社も見えます。

555号室「湯主スイート」檜のお風呂
555号室「湯主スイート」

この神社は「湯神社」と呼ばれる古社。小さいながらも古式ゆかしい建築で、宮大工が建てたとあって古い獅子木鼻や平行垂木など、神社仏閣様式がふんだんに取り入れられた味わいのある社です。
湯治客が多く訪れていた際には、治療のお願いごとや傷を癒したことへのお礼参りが行われていたということで、その神社を部屋から眺められる湯主スイートは縁起が良いお部屋とも言えますね。

「湯神社」
「湯神社」

私が宿泊したお部屋は「セミスイート」。こちらも十分な広さを持つステキなお部屋でした。
シモンズ社製クイーンサイズのベッドは寝心地も最高。シーツや枕に至るまで、眠りにこだわりがあることを感じさせる品質でした。
洋室ではありますが障子をデザインに取り入れるなど、落ち着く空間となっていました。

「セミスイート」
「セミスイート」
「セミスイート」

洗面はダブルベイシン、そしてアメニティもメンズ・レディースどちらも揃っています。
お風呂は広く、バラ風呂でエレガントなバスタイムを過ごせます。

アメニティ
バラ風呂

開放的で大きなガラス窓に向いたこれまた大きなソファ。ゆっくり、のんびりするには十分すぎるお部屋でした。

「セミスイート」
「セミスイート」

このようにモダンなお部屋を持つ湯主一條ですが、これら宿泊施設がある「別館」は2008年にフルリノベーションされています。
「別館」に対し「本館」も以前は宿泊施設、それも湯治客用の宿として存在していたのですが、現在はこの建物を個室料亭とすることで完全に宿泊との切り離しを行いました。

「別館」

これにより、”歴史的建築物としての本館”と、リニューアルされた”現代風の別館”という2つの空間が生まれました。この2つを結ぶ橋「時の橋」を通り時代を行き来するという「宿内タイムトリップ」が可能となったのです。
大正時代から昭和初期に渡る建築様式が残る本館は国登録有形文化財に登録された木造建築。別館を現代風にリノベーションしたことで、本館の良さや価値が改めて見直されることとなり、この宿でしかできない個性が生まれました。
現代では作ることが出来ない木造一部4階建てという設備、経年美を感じさせるツヤツヤの廊下やゆがみのある手延べの板ガラス、渋味を発する木の窓枠など、全てにおいてレトロな味わいを感じる本館は一見の価値ありです。

「別館」
「別館」

宿の中で時間旅行は宿泊者のみが体感できる特権。食事の時間になるとお部屋までお迎えが来て、「時の橋」を案内され大正時代へと誘われます。

「時の橋」

窓に沿ってぐるりと回廊が巡り、そこから個室の部屋へとつながります。
一気に時代を遡り、非日常の空間へと引き込まれる時。
時代を経た建物にありがちのすきま風の寒さを防ぐため、厚めのクロスをかけテーブルの下にヒーターの風がこもるよう配慮された食卓。暖色のライティングもぬくもりある空間を演出しています。

「別館」廊下
「別館」個室

湯主一條は料理にも定評がある宿。手の込んだ一品一品は月替わり。連泊する場合は毎日違うものが用意されます。
器も趣きあるものばかり。数々の前菜が盛られたプレートは宮城県産の「雄勝石」。墨の硯などに使われたり旧北海道庁や東京駅の屋根にも使用される宮城県特産の石で、スレート石とも呼ばれます。

料理

お酒なども多種用意されています。例えばビールは各社のもの、和洋酒の取り揃えも十分。
この日はシャンパンをいただきました。

シャンパン

続くはお造りとお椀。
訪問した1月のメニューは、冬の食材がふんだんに使われたものでした。
てっさ(ふぐのお刺身)、お椀は蟹真丈に羽子板の人参や金粉があしらわれた華やかなもの。

てっさ(ふぐのお刺身)
お椀

サラダ。一見なんてこともないサラダなのですが、シャッキシャキでとてもおいしい。
「宮城の野菜ってこんなにおいしいんだ。」
と、心から思えるサラダです。れんこんやきくらげなど、アクセントもありました。

サラダ

蓋物。カレイのかぶら蒸し。海老が鮮やかな一品。
京料理では必ず冬に食べる定番である「かぶら蒸し」。魚をかぶで包み込み蒸しあげることで旨味をぎゅっと閉じ込めます。シンプルながらも出汁と食材の味が主役となる、和食ここに極まれりなご馳走です。

カレイのかぶら蒸し

いよいよ夜のコースのメイン。「仙台黒毛和牛」「和牛ヒレステーキ」「甘鯛筍包み焼き」の3種類からのチョイス。
どれも魅力的で迷ってしまう。
華やかなのは仙台黒毛和牛。添え野菜の鮮やかさ、ピンクソルトでいただくステーキ。
高級魚「甘鯛」は有田焼の美しいお皿でサーブされます。身から溢れる脂は上品の一言。

「仙台黒毛和牛」
「甘鯛筍包み焼き」

鍋物もチョイス。「蔵王フランス鴨鍋」「金目鯛の鍋」「ふぐちり鍋」という3つから。
選べる楽しみだけでなく、小鍋で提供されるのでそれぞれ好きなものを選べ、シェアすることも可能です。
金目鯛の鍋は和風旨味が溶け出した優しい出汁がじんわり染みます。
鴨鍋はコクがしっかり引き出されていました。ごぼうとの相性が最高でした。

「金目鯛の鍋」
「蔵王フランス鴨鍋」

最後のごはんに宮城が誇る「ひとめぼれ」。けんちん汁、手作りのなめたけとおいしいお新香。

ひとめぼれとけんちん汁

最後のデザートはキャラメルの苦みが効いたなめらかプリンでした。

なめらかプリン

宿の中での長い夜を過ごすひとつとして、併設されたバーは楽しみの一つ。
湯主一條のバーは、エムズシステムの波動スピーカーから最高の音響が供される昼間も良いのですが、夜はぐっと雰囲気の良い空間になります。
この日はカクテル「スカイダイビング」を。華麗なカクテルパフォーマンスも見ることができましたよ。

エムズシステムの波動スピーカー
併設されたバー
カクテル「スカイダイビング」

朝。
ゆっくりした朝の時間を味わう中、部屋までお迎えをいただいて向かうのは朝ごはん。そしてまた、時空を結ぶ時の橋を渡り、朝食をとるために本館へ。
朝食は「和食」「洋食」が用意されています。どちらも使われている地元の食材から、この地の豊かさを感じます。人気なのは和食です。

朝食「和食」
朝食「洋食」

ビタミンカラーで朝から元気になる洋食のチーズオムレツの一皿。
またほかほかで食べられる趣ある器に盛られた和食の玉子焼き、鮭と銀鱈。

チーズオムレツ
玉子焼き、鮭と銀鱈

朝食を終えチェックアウトしたら、お宿の皆さんが並んでお見送りしてくださいました。

湯主一條は、老舗の良き伝統と誇りの上に現代に合った感覚やニーズ、新鮮な思考と進み続ける力を備えた宿でした。
今回は旅先として訪れたこの宿で、さらなる時間の旅へと誘う「トリップ・イン・トリップ」が体感でき、時代を行き来することで生まれる非日常感という新しい旅のカタチを体感した旅となりました。

時音の宿 湯主一條

改めて温泉という、自然の恵みを感じた旅でした。
そんな全国津々浦々の数ある温泉からこれぞという自分の好きなお宿を選ぶ「みんなで選ぶ 第11回 温泉大賞(R)」。絶賛投票受付中です!
現在までの中間発表ではそうそうたる有名温泉地が名を連ねていますが、全国には小さくてもポテンシャルの高い温泉が沢山あります。
大地を肌に感じることが出来る温泉という自然の恵みからの恩恵を受けつつ、これからも旅を楽しく続けていきたいです!

みんなで選ぶ 第11回 温泉大賞

時音の宿 湯主一條

時音の宿 湯主一條

時音の宿 湯主一條
  • 〒989-0231 宮城県白石市福岡蔵本字鎌先1−48
  • 全24室
  • 露天風呂付客室あり

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※ 情報は取材時のものです。掲載の情報内容でのサービス提供を保証するものではありません。サービスの仕様上、リンク先の各予約サイトの掲載内容(プラン内容、料金、空室情報、施設情報等)と一致しない場合があります。ご予約の前に必ず各予約サイトで内容をご確認ください。

西村愛(ニシムラアイ)

西村愛(ニシムラアイ)

西村愛(ニシムラアイ)

フード&トラベルライター
島根県出雲市出身東京在住。
ブログ https://love.exblog.jp/

黎明期よりブログ執筆により個人メディアから様々な情報を発信し続けている。大手飲料メーカー、大手カメラメーカーなどの公式ライターを務める傍ら、各地の取材旅行などで全国47都道府県を踏破、さらには世界を飛び回る。現在、JAL「On Trip JAL」にて”西村愛のゴーゴートリップ"連載中。

2017年、「石見国(いわみのくに)|島根県石見地方観光と石見神楽情報サイト」 にて首都圏目線でインタビュアー、ライターを務める。
2018年、「さんいんスペシャル(NHK松江)」”殿が育んだ「茶の湯の街」〜松平不昧と松江〜”旅人として出演。
2018年、「西村愛の山陰道沿線新発見の旅」サイト公開。
共著に「島根 地理・地名・地図の謎 (実業之日本社)」「わたしのまちが日本一事典(PHP出版)」など。
遣島使(島根県ふるさと親善大使)、出雲観光大使。

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