渋温泉のメインストリートである石畳道の東端、信玄かま風呂がある温泉寺の総門前に建っている宿で、近代的な6階建ての建物に客室わずか12室という贅沢な空間が広がっている。暖かさを感じる館名は「炭の火の素朴な温もりを宿の心に」との気持ちから付けられた。華美な装飾や施設はないが、細かいところまで行き届いたアットホームなもてなしが好評で、幾度となく足を運ぶ常連客も多い。13時30分というチェックインも、我が家のようにのんびり過して欲しいという心の現われだ。
宿1番の自慢はやはり温泉。最上階のワンフロアを使った男女別の大浴場には、無色透明の源泉があふれている。基本的に加水・加温・循環をしない本物の源泉は肌触りが滑らかで、体が芯まで温まる。視界を遮るものがほとんどない露天風呂は、北信五岳や志賀高原の山並みが一望。大型ホテルのような大きい湯船ではないが、信州の爽やかな風を感じる開放的な造りが大きさを補って余りある湯浴みを演出してくれる。
日本料理の伝統を守りながらも創造性に富んだ料理もこの宿の魅力。板場を仕切る池田昌雄料理長は、東京の豆富料理の老舗「笹の雪」や千葉の鰻料理店「伊勢定」など日本料理の名店で腕を磨いた、この道40年以上のベテランだ。山ノ内町須賀川産の新鮮野菜や甘味たっぷりの牛肉、佐久鯉といった地の素材を巧みに使い、オリジナリティ豊かな料理で楽しませてくれる。庖丁の技を感じさせる盛り付けも楽しみ。
炭の火のような素朴な温もりを宿の心に「御宿炭乃湯」と名付けました。皆様に気持ちよく、心ゆったりと過ごしていただけるように努めてまいりたいと存じます。(若女将の竹節みどりさん)
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