たんを切るぜんそくの湯 ~老沢温泉旅館(福島県)~

ビルディング化された温泉宿も、立ち寄れるカフェや食事処もありません。

あるのは湯治場の歴史を刻み続けてきた木造の宿のみ。

そこには、のどかでほっとする、 日本のふるさとらしい風景が広がっていました。

どっしりと重厚な趣きの外観 ≪写真:野添ちかこ≫

どっしりと重厚な趣きの外観 ≪写真:野添ちかこ≫

 「女性入浴中」の看板をかけて

歩くとギシギシと音のする廊下、鍵のかからない襖戸、トイレは共同……。

ひなびた湯治宿ならではの素朴さがそこかしこに漂っていて、おばあちゃんの家に遊びに来たかのような懐かしさを覚えました。

客室は2間続きで大きくて清潔。ただし出入り口は襖 ≪写真:野添ちかこ≫

客室は2間続きで広くて清潔。ただし出入り口は襖だから鍵はかかりません ≪写真:野添ちかこ≫

福島県・西山温泉の老沢温泉旅館は私の中の“田舎”のイメージを具現化したような宿。エアコンなしでも風が通って気持ちいいのが、木造の日本家屋のすばらしさですね。

ちょっと面食らったのは、トイレも風呂も脱衣所も、男女別ではなく、たった一つということ。

「他の人が入って来たらどうしよう……」

そんな不安感もありましたが、そもそも泊まり客は3人しかいません。

風呂に入るときには「女性入浴中」の手書きの看板を表にしておけば、男性客が入ってくる心配はありません(男性の場合は反対)。

誰かが移動すると足音が聞こえるから、浴室に誰かが向かったこともすぐに分かります(笑)

「最近のお泊まりはほとんど1、2組。多くて3組」(女将)だそうで、他のお客さんと鉢合わせすることはありませんでした。むしろ、夜中の風呂は一人っきりだと怖いくらい(笑)。

 

「女性入浴中」の札を表にして、入浴! ≪写真:野添ちかこ≫

「女性入浴中」の札を表にして、入浴! ≪写真:野添ちかこ≫

 

温泉神社が浴室内に!

浴室の扉を開けると、コンクリートでできた、温度の異なる3つの湯舟が並んでいます。

お湯は含硫黄-ナトリウム-塩化物泉。

つるつるとする感触で、細かな湯の花も浮かんでいます。

 

シャワーやカランはなし。3つの湯舟が並んでいます ≪写真:野添ちかこ≫

シャワーやカランはなし。3つの湯舟が並んでいます ≪写真:野添ちかこ≫

他の浴室にはない特徴が、浴室内に温泉神社が祀られていることです。ご神体は、源泉のそばにあった石で、鏡も一緒に祀ってあります。手書きで「老沢温泉神社」と書かれた旗は、常連の湯治客が奉納していくそうで、自宅で書いてもってきたり、宿の廊下で書いたりするとのこと。

この温泉は古くから、「たん切りの湯」といわれていたそうで、ぜんそくなどに効果を発揮するのだそうです。泉質のみならず温泉神社の効用も少なからずあるのかもしれませんね。

 

浴室内に温泉神社があるというのも珍しい ≪写真:野添ちかこ≫

浴室内に温泉神社があるというのも珍しい ≪写真:野添ちかこ≫

鉄分は少なく、塩分が多いため、湯はにごることはなく、透明。冬は10~15リットル/分、夏は3リットル/分程度の湧出量だとか。洗い場も、シャワーもなく、湯治場の趣き。震災後は湯治客が減ってしまったそうなので、応援の意味も込めて、ぜひ立ち寄ってみてくださいね(昼間は大女将が対応してくれます)。

 馬肉やにしんなど、奥会津の味覚がいっぱい

1泊2食付きで8,500円~という料金設定だから料理はあまり期待していなかったのですが、これが、予想以上でした。

お膳にのっているのは、サメの煮付けや身欠きにしん、馬肉の刺身、ぜんまい、肉じゃが、にしんの天ぷらなど、奥会津の味覚が一口ごとに優しい味わいを伝えてくれました。正直、お得感があります。たった何人かのために、こんな料理を用意してくれるなんて、本当に頭が下がりますね。料理は女将と大女将のご担当とのこと。

こちらが夕食。お酒を飲みたくなるメニュー構成です ≪写真:野添ちかこ≫

こちらが夕食。お酒を飲みたくなるメニュー構成です ≪写真:野添ちかこ≫

 

さらに、自炊宿ならではの炊事場もありますので、食材を持ち込んで自分でつくることもできます。自炊場の利用は秋・冬が多く、10日以上滞在される方もいらっしゃるそうです。

 

自炊をする人はこちらで。お鍋も食器もそろっています ≪写真:野添ちかこ≫

自炊をする人はこちらで。お鍋も食器もそろっています ≪写真:野添ちかこ≫

お話を伺った、女将の菊地美奈子さん ≪写真:野添ちかこ≫

お話を伺った、女将の菊地美奈子さん ≪写真:野添ちかこ≫

次回は西山温泉の湯めぐりについて、ご紹介します。

老沢温泉旅館

  • 福島県河沼郡柳津町五畳敷老沢114
  • 全5室
  • IN/OUT とくに決まった時間はなし
  • 1泊2食8,500円(消費税・入湯税別)~、自炊の場合素泊まり3,500円~
  • 日帰り入浴 可(400円、10~16時〈とくに時間指定なし。要確認〉)

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