春風を感じて、大露天風呂に遊ぶ ~熊本県 黒川荘~

内湯を抜けて露天風呂へと続く扉を開けると、大きな、大きな露天風呂が出迎えてくれました。ここは宿泊者だけが入れる「屏風岩露天風呂」。

大きさのみならず、その色と肌触りのよさにもうっとり ≪写真:野添ちかこ≫

大きさのみならず、その色と肌触りのよさにもうっとり ≪写真:野添ちかこ≫

驚くのはそのスケール感。黒川温泉の宿の露天風呂はどこも大きめですが、ここは100畳は超えているかもしれません。
「大きさをきちんと測ったことはないのですが、やまびこ旅館の仙人風呂に匹敵するのではないでしょうか」とは女将さんの弁。

湯の色は少しグレーがかったくすんだグリーン色。泉質はナトリウム-硫酸塩・炭酸水素塩・塩化物泉で、皮脂の汚れをしっかりと落としながらも保湿効果の高い美肌の湯。季節の変わり目でかさかさとしていた肌もしっとりとしてきて、3歳は若返りそうな気分です(笑)。

積み重ねられた岩を伝って源泉が注がれる湯口をよく観察してみると、茶色に変色していて、鉄分なども含まれているみたい。露天風呂を形作る岩は直径1・5メートルを超えそうな大きなものばかり。岩の上には苔が生え、そのうえに植物が芽吹いていたりとのどかな雰囲気が漂っています。近くに道路が通っているようですがうまく目隠しされていて、湯に浸かっていると小鳥のさえずりが聞こえてきたり、気持ちのよい癒しのひと時を過ごすことができました。内風呂の檜の風呂にも同じ源泉が注がれていますが、露天よりは透明度も高く、少し白っぽい感じ。大きな湯舟なのにいずれも源泉かけ流しです。

檜の内湯もあります ≪写真:野添ちかこ≫

檜の内湯もあります ≪写真:野添ちかこ≫

 お楽しみの夕食は驚きの連続

料理に定評があるので、料理にこだわりたい人におすすめしたいお宿です。

料理長が直筆で「春風駘蕩」という短冊を書いていらっしゃいましたが、春風が吹く、のどかな里山の風景を思い起こすような料理の数々でした。季節感を演出しながら、驚きを感じさせる仕掛けも忘れず、最初から最後まで飽きることなく楽しめる素晴らしいお料理でした。

黒川荘の季寄せのお皿

「季寄せ」のお皿。豆腐の味噌漬けや塩ゆで空豆、辛子蓮根、野菜煎餅、らっきょう(落橋)ぬた和えなどが盛られています ≪写真:野添ちかこ≫

熊本名物の辛子蓮根は「揚げ辛子蓮根」が出てきました。辛子蓮根って私はちょっと苦手なのですが、こんな食べ方もあるのだと新鮮でした。また、「ぬた和え」にはらっきょうが合えてあって、その取り合わせにちょっと驚きました。「野菜煎餅」はパリパリの菊芋チップスに塩がふりかけられていてお酒が進みます。

椀盛りの「丸豆腐花弁椀」は、丸い玉子豆腐の中に、なんとすっぽんが忍ばせてありました! お出汁もすっぽんで、やさしい味わい。豆腐の上にはねぎやぜんまいがのって、桜の花びらがちりばめられていて春らしい(^^♪

聞けば、料理長は大分県・由布院の名宿で修行をされ、お師匠さんは京都の日本料理店出身のため、遊び心のある創作会席がお得意のようです。

もっとも春を感じるお椀が、「桜鯛の桜粥」。桜鯛を桜の葉でくるみ、上には白魚と桜エビがのっていて、一口食べれば口の中に春が広がっていきます。噛めば山椒の隠し味がピリリ。

黒川温泉の桜粥

桜鯛の桜粥。ピンク色のおかゆが幸せ気分を高めてくれる一品 ≪写真:野添ちかこ≫

さらに、面白いのが変わり鉢の「特選牛出汁コンフィー」。

黒川荘のローストビーフ

ローストビーフが和の器で出てくるというのも斬新です ≪写真:野添ちかこ≫

白いのはマッシュポテトでもとろろでもなく、なんとカリフラワーのソースでした! 添えられたフライはふきのとう。ローストビーフを引き立たせる脇役たちにも手を抜かない、和洋折衷のお皿。こういう出し方はあまり見たことがないので、度肝を抜かれました。

お鍋は「焙り赤鶏と肥後だご汁鍋」で、にんじん、新じゃが、かぼちゃ、ごぼう、大根、舞茸、油揚げ、こんにゃくと具だくさん。最後に水菜を入れて野菜たっぷりでいただきます。

黒川荘の鍋

お鍋は野菜たっぷり。地鶏のスープが旨い! ≪写真:野添ちかこ≫

ご飯はこの出汁を使った雑炊と香の物。最後まで残すことなくいただけるのも味覚のハーモニーが完璧だから。日本料理は一品一品の単品ではなく、やはり流れですね。

最後は「苺の餡蜜」。白玉、杏仁豆腐に苺のジュレ、つぶあんが入っていて、上にはココナッツパウダーが振ってあり、和の会席でありながらフレンチのような美しさも兼ね備えていました。

夕食は部屋食で一人の仲居さん(この日はさわやかな広島出身の女性が対応してくれました)がサーブしてくれました。食事処での夕食が多くなっている昨今はこんな部屋出しスタイルも逆に新鮮に思えます。

翌朝は予約をしておいた貸切風呂へ。熊本の震災後、新設された家族湯は3つあり、宿泊者は無料で50分間利用できます。

貸切風呂の「弐の湯」。窓から屏風岩が見える半露天風呂です ≪写真:野添ちかこ≫

貸切風呂の「弐の湯」。窓から屏風岩が見える半露天風呂です ≪写真:野添ちかこ≫

貸切風呂はご夫婦やご家族水要らずで過ごしたい人に人気なので、満室だったこの日は、朝食前の時間しか空いていませんでした。貸切風呂に入りたい場合には到着後すぐに予約を入れるのがいいですね。

ちなみに、震災後、この宿では浴場を改修し、宿泊と外来入浴を別にしたので、宿泊者は宿泊専用と外来用の両方の湯舟に入ることができます。

黒川荘

  • 熊本県阿蘇郡南小国町満願寺6755‐1
  • 全25室(母屋20室、離れ和室4棟、離れ洋室1室)
  • IN 15時/OUT 11時
  • 1泊2食17,000円(消費税・入湯税別)~
  • 日帰り入浴可(8時30分~20時30分受付、600円)

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